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壁にかけられた時計は、無残にも、いつものように時を刻み続ける。
ここで、父親の携帯から着信音が流れた。
「なんだよ、こんなときに」
父親は舌打ちしながら、携帯の方向へ足を向ける。
うなだれたままのかなめ。
その瞳には、明かりがなく、生気が失われている。
ぼやける視界。
その視界の中に、1枚の写真があった。
もともと、その写真には、朗らかに微笑む夫婦と、真ん中で陽気なポーズをとる小さな男の子がうつされていた。
しかし、今のその写真は、母親のところだけが原型を留めていないほど引き裂かれている。
かなめは拳を強く握りしめた。
なんで…
なんで、あんなのが俺のお父さんなんだよ…
なんで、お母さん、俺を見捨てて行っちゃったんだよ…
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