離れていても

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離れていても

僕と圭吾は島からフェリーで登校していた。小学校を卒業後、島には中学がなかったから高校卒業するまで二人で。 「もう来年はこの海、渡らないんだな」 圭吾は島を出て一人暮らしをする。デッキで海風にあたりながら呟いた圭吾。 ああつまらない。圭吾がいなくなるなんて、僕はどうやって生きればいいの。 ショボンとしていた僕の頭を、圭吾はポンと叩いた。 「泊まりに来いよ、待ってるから」 「うん」 きっとその時は、迫ってしまうけど、勘弁してね。 *** 高校を卒業して、正紀は島に残って俺は島を出た。 島には小学校しかなかったから、中学から高校まで毎日フェリーで二人で通っていた。海風にあたりながら、何気ない話をする時間が好きだった。 それはもう半年前のこと。 「圭吾!来たよ!」 島を出る前に、一人暮らしするアパートの住所を渡し『泊まりに来いよ』と俺が言ったのを、律儀にきいて正紀は遊びに来た。 半年しか経ってないのに、むちゃくちゃ懐かしい気がする。 自炊の腕はまだまだだけど、正紀は俺の作ったオムライスを美味しいと笑顔を見せながら食べてくれた。 砂糖を入れすぎた、甘いオムライスなのに。 半年間の近況をお互いに報告して、そろそろ寝るかと寝室に移動しようとした時。 正紀は俺のシャツを掴んだ。 「…引かないで、聞いてほしいんだけど。僕ずっと圭吾が好きなんだ」 「へ」 突然の告白。しかも、『気持ち悪いなら今日はここには泊まらない』と言いはじめた。 俺は村言葉に驚きながらも、気がついた。 この半年間何だかポカンと心に穴が開いたような気持ちだったのは、正紀がいなかったから。フェリーでの時間が何よりも好きだったのは、正紀がいたから。 「お前、俺が追い出さないの分かってて、この時間に言ったんだろ」 「…ッ、違うよ、そんなことない」 「大丈夫だよ。気持ち悪くないから今日はここに泊まっていけよ」 正紀の頭に手を置くと、正紀の顔が赤くなっていく。 「それって…!」 離れたから分かったこと。そして、離れていても大丈夫。 俺らはきっとうまくいく。 【了】
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