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春夏秋冬
アイツと出会ったのは、春のクラス替えの時。
「八島じゃん、よろしくな!」
そう大きな声で山口が握手を求めてきたのを覚えてる。昨年まで違うクラスだったのに、何で俺を知ってるんだろうと思いながら握手をした。
その手が熱かったのを、覚えている。
夏になる頃には、いつも一緒につるんでいた。
昼飯の焼きそばパン、甘ったるい自販機のバナナジュース。
「アチィな…」
ぐったりしていたら山口は突然、俺の首筋をベロっと舐めた。
「うぁぁぁ?!な、何すんだよっ」
「塩分が欲しかったから」
「確かに汗かいてるけど…って馬鹿かお前ー!」
掃いても掃いても落ちてくる、枯れ葉の掃除に苦労した秋。
「文化祭、楽しかったな!」
「明日から放課後自由だー」
俺がそう言いながら背伸びしていたら、背後から突然山口に抱きしめられた。
「…おいっ」
「秋の物悲しい気持ちって、こんな感じなんかなあ?」
「知らねーよ!」
そして、冬。
「山口ー、お前はいま何してる」
「え、八島にすりすりしてる」
試験勉強をする為に山口の家で勉強していたら、案の定また抱きついてきて、気づいたら押し倒されていた。
「冬って人肌感じたいよね」
「…山口聞いていいか?お前なんでこんなにスキンシップ激しいの」
セーターを少し捲りながら、顔を胸に押し付けてくる。
「八島がどこまで許してくれるかなーって」
ヘヘッと笑顔を見せて、露わになった胸にキスをする。
何でだろうな、抵抗する気力もない。
それはきっと初めて握手したあの日から、
ずっと山口に触れられたかったのかもしれない。
「全部、許してやるよ」
「やったね」
【了】
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