春夏秋冬

1/1
前へ
/61ページ
次へ

春夏秋冬

アイツと出会ったのは、春のクラス替えの時。   「八島じゃん、よろしくな!」 そう大きな声で山口が握手を求めてきたのを覚えてる。昨年まで違うクラスだったのに、何で俺を知ってるんだろうと思いながら握手をした。 その手が熱かったのを、覚えている。 夏になる頃には、いつも一緒につるんでいた。 昼飯の焼きそばパン、甘ったるい自販機のバナナジュース。 「アチィな…」 ぐったりしていたら山口は突然、俺の首筋をベロっと舐めた。 「うぁぁぁ?!な、何すんだよっ」 「塩分が欲しかったから」 「確かに汗かいてるけど…って馬鹿かお前ー!」 掃いても掃いても落ちてくる、枯れ葉の掃除に苦労した秋。 「文化祭、楽しかったな!」 「明日から放課後自由だー」 俺がそう言いながら背伸びしていたら、背後から突然山口に抱きしめられた。 「…おいっ」 「秋の物悲しい気持ちって、こんな感じなんかなあ?」 「知らねーよ!」 そして、冬。 「山口ー、お前はいま何してる」 「え、八島にすりすりしてる」 試験勉強をする為に山口の家で勉強していたら、案の定また抱きついてきて、気づいたら押し倒されていた。 「冬って人肌感じたいよね」 「…山口聞いていいか?お前なんでこんなにスキンシップ激しいの」 セーターを少し捲りながら、顔を胸に押し付けてくる。 「八島がどこまで許してくれるかなーって」 ヘヘッと笑顔を見せて、露わになった胸にキスをする。 何でだろうな、抵抗する気力もない。 それはきっと初めて握手したあの日から、 ずっと山口に触れられたかったのかもしれない。 「全部、許してやるよ」 「やったね」 【了】
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加