秘密の箱は秘密の鍵

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秘密の箱は秘密の鍵

僕は知っているんだ。 アイツのベッドの下にコッソリ、置いてある箱。 たまたま掃除しようとした時に、目に入ったその箱には、小さな鍵穴があって、開く事が出来ない。 元々は、幼馴染の僕たち。社会人になるころに恋人になってた。同棲を初めて2年。隠し事なんてもう何もない、って思ってたのになんだよ、コレ。 鍵をかけて、隠すように置くなんて、きっとろくな物が入ってない。箱を揺らして中身の音を聴こうとしたが、カサカサと紙が入ってるようなものしかしない。まさか元彼女の写真?! 僕はいたたまれなくなって、横髪を止めてたヘアピンを鍵穴に突っ込む。僕は昔、鍵屋でバイトをした経験がある。ゆえに、こんな箱の鍵なんて…朝飯前だ! 『カション』 そんな音を立てて、箱はいとも簡単に開いた。僕は息を呑みながら中を覗く。 箱の中にあったものは… 写真。元彼女ではなくて。僕の写真。 手を繋いで立っている中学校の入学時の写真。修学旅行での一コマ。そして先月二人で行った旅行の写真。この箱に二十枚くらいみっしりと入っている。 …どんだけ僕が好きなんだよ。 *** 俺の彼氏はアホだ。 たまに料理作ってやると(むちゃくちゃ簡単なやつ)泣いて喜ぶ。雨の日に駅まで傘を持って迎えに行ったら、感激のあまり抱きついてきた。靴下、左右違うの履いてみたり。 背が高くて、短髪。サッカーをしていた彼は、昔からモテモテだった。幼馴染の俺はそんな彼にやきもちを焼いてた。 アイツのアホさは、俺しか知らなくていいのに。 いつの間にか、幼馴染としてではなく、恋愛対象になってることに気づいて。 でも奇跡が起きて、俺らは恋人同士になった。 それでもアホさは変わらずだ。 そんなアイツにちょっとした悪戯をしてみた。こっそり自分の部屋に、鍵をかけた箱を置いたんだ。掃除担当の彼は見つけて絶対、気にするはず。そして、鍵を開けるはず。 いろんなこと想像しながらね。 案の定、鍵を開ける彼の背中を、俺は後ろからコッソリ見ていた。中に入っているものが、自分の写真だらけでビックリしてる。アイツのことは全部、お見通しなんだから。 「何、見てんのー」 後ろから抱きついたら、アイツはすっごい驚きながら俺を見た。 「ダメでしょ、人のものみたら」 「ごめ…んっ」 アホで可愛くてたまらない彼氏に、俺はキスをする。 「元カノの写真なんかいれてないから」 「…お前、何で僕の考えてること分かるの」 「分かるよ、好きな人のことはね」 キスを続けて、俺らはそのままベッドで抱き合う。 こんなに好きになるなんて、俺もアホだな。 まあアホ同士で幸せならいっか。 【了】
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