86人が本棚に入れています
本棚に追加
片耳の幸せ
智洋はいつも黒のピアスをしていた。
白いうなじから繋がる耳についているピアスはなぜか色っぽくて、大好きだった。
カッコいいなあ、カッコいいなあ。
いつも俺がそんなことを言っていたから、ある日智洋がピアッサーを持って来た。
「悠介も開けりゃいいじゃん。あけてやるよ」
耳たぶを冷やしてピアッサーを思い切りバチン、と閉じて穴を開ける。
音が怖かったけど、冷やしていたからか痛みはほぼない。
「俺が悠介ん中、入れた時の方が、痛かった?」
「…バッカじゃねーの!」
数日後、智洋が青のピアスを持って来た。
ワンセットのピアスを、お互い1つずつ手にとって、耳につける。
さりげない「お揃い」
こんな安い物で幸せになれるなら、俺ら、安泰だな。
【了】
最初のコメントを投稿しよう!