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プロローグ
――……ちょっと待て。
ドコのドラマだ、マンガだ。
――……目の前に、裸のオトコとか――ありえんだろ。
目が覚め、一番最初に浮かんだのは、そんなコト。
何故か痛くてダルい身体を起こして、周囲を見回せば、まったく覚えのない、窓の無い部屋。
どこかのホテルのようだけど……。
そんな事を考えていると、一瞬、寒気がしたので視線を落とす。
そして、素っ裸の自分に気がつき、あたしは、声にならない叫びを上げた。
――は??何??何がどうなってんの⁉
パニックを起こしかけたその時、不意に腕が引かれ、あたしは、そのまま倒れ込む。
けれど、無意識につむった目を恐る恐る開けると、目の前には、かなり鍛え上げられた胸板の感触。
「――おはよー、茉奈さーん」
ぎゅう、と、キツく抱きしめてくるその男が、寝ぼけたように自分の名前を呼んだ事に驚き、あたしは顔を上げる。
目が合ったと思えば、ニコリ、と、可愛らしく、人懐っこい笑顔を見せた。
「ち、ちょっと……アンタ、誰……。……何で……名前……」
「――……え?」
あたしの反応に、いぶかしげに返す男は、そのまま至近距離でのぞきこんできた。
「――……え?……覚えて……ない、んですか?」
一瞬見せた、戸惑いと、傷ついた表情に、思わず罪悪感を感じるが、そのままうなづく。
「ごめんなさい!正直、何で、こんな状況かもわかってない!だから、申し訳ないけど、忘れて!お互いのため!!」
あたしは、そう言って、急いで脱ぎ散らかしていた服をかき集めて着ると、バッグから万札一枚をテーブルの上にたたきつけるように置いた。
「ま、茉奈さん!」
呼び止める声を振り切るように、あたしはその部屋を飛び出した。
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