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プロローグ
それは、美紀が手を伸ばしてベランダに干している洗濯物を取り込んでいるときだった。
突然、胸を締めつけられるような、言いようのない圧迫感を覚えた。
それは、お腹の中から緊急事態を知らせる信号だったのかもしれない。
美紀は、続いて襲ってきた激痛に、堪らずその場にへたり込んだ。意識も次第に朦朧としてきた。
それでも手探りをしながらリビングに戻った。
そして、微かな視界を頼りに夫の番号に電話した。
「あなた?……私……だめみたい……お願い、帰ってきて……」
夫の巧司は、突然の電話で一方的にか細い声で言葉を発した後、呼びかけても返事がない妻に、ただならぬ事態が生じていることを察知した。
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