詩「青春の夜」

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桜木の下に投棄されていた大量のゴ。ミと、 年を取った大人が子犬のように吠える、人の 世界は花見のように目が回って、夜が近づい て、帰りの電車の中で眠っているきみ、その 後ろの窓が徐々に暗くなっていき、太陽はも う落ちたのか、トンネルを抜けると、真っ暗。 きみはまだ眠っている。月明かりを頼りに、 ぼくはきみを探している。探していく。探し ていた。過去なのか、未来なのか、今この瞬 間に吹く風のなかに、きみの香りがしないか、 ただれそれだけが「今この瞬間」を限りなく リアルにするひとつで、ああ、夢にみた景色 をこれから見に行くときの浮ついた心のよう に、ぼくはきみがいないと世界を認識できな いようだ。 どうかな、そこはキレイかな? そこにぼくはまだいるのかな? 遠い遠い確かそうだあれはいつだったか、そ のときは目の前のきみを見て「きっとこのま ま永遠に」なんて思いながら決して色褪せる ことなくその時代のままその姿のままその仕 事のままそのままのきみのままで一生を過ご せると思っていたのに、気がついたらそれは 過去になって、きみは過去になって、昔とか 当時と思い出とかっていう名称に変わってい て、それでもたまに夢を見て涙を流して、き みに会いたくなって。 ぼくはどこを生きている。ぼくはどこに生き ている。 目が覚めない。永遠に、春、四季の始まりと、 いつかの夜、香水、果てしなく続く十円ハゲ の円周率のように、抜けていく、抜け落ちて いく未来のピースが月光に照らされて、ああ、 きみが見えない、桜木の下にあるゴ。ミと、 大人になったぼくたちの間に横たわっている 青春時代は、そのままの世界で深く呼吸して。
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