八 霧島殺害事件

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 覆面の男は千切れた霧島の鼻と耳を踊り場から蹴落とし、小型高周波電流発生機と道具をバッグに入れて背負った。  階段の支柱に固定してあるピアノ線の末端を解いて巻き取りながら階段を下りてピアノ線をポリ袋に入れ、一階のコンクリートの床に立った。既に股間の千切れた部分はピアノ線の末端から外れて霧島の傍に落ちている。  覆面の男が霧島の頸動脈に手を当てた。鼓動は弱い。千切れた鼻の前に手を翳した。かすかに呼吸をしている。  覆面の男は背負っているバッグを床に置いた。ピアノ線のポリ袋をバッグに入れ、食塩水入りのペットボトルを取り出し、霧島の出血が止まらないよう、千切れた股間に食塩水をかけた。霧島はまだ、麻酔が効いている。  覆面の男は、霧島の腕と脚と腰をパイプ椅子に括りつけている結束バンドを切り取ってバッグに詰めた。バッグの中にはハンマーやプライヤー、小型高周波電流発生機と部品が入っている。覆面の男は周囲と階段を見た。遺留品は何も残っていない。
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