十三 特命

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十三 特命

 翌日、一月八日、土曜。午前九時。  四谷警察署生活安全課の三島幸子係長(警部)の机で電話が鳴った。電話に出ると、 「署長の藤原だ。すぐ、署長室に来てくれ」  と藤原邦夫署長(警視)が三島を署長室に呼んだ。  三島が署長室に現れて藤原署長の机の前に立った。  藤原署長は三島を見て、 「吾妻直輔参事官(警視正)と刑事部捜査第一課の東条課長(警視)から特命だ。  ただちに、本庁の吾妻直輔参事官の元へ出頭しろ」  と言ってニヤリと笑った。 「何ですか?その笑いは?」  三島は署長の笑いが気になった。本庁への移動命令か?あんな権力争いの巣窟なんかに居たら堪らない。碌でもない上司にくっついてズルズルと奈落の底へに落ちるだけだ。茂木や霧島がいい例だ。ここは、移動を辞退するに限る・・・。  そう思って、三島は断固とした口調で、 「移動命令なら断ります」  と言った。  署長の顔から笑いが消えた。 「特命だぞ!」
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