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「父上から、何があったか聞けないのですか?」
高田巡査が妙な表情になった。親子だから話を聞けるだろうと思っているらしい。
「うん。なかなか口を割らない。一発殴って口を割らせる訳にもゆかない・・・」
三島は一昨日の夜の父の助言を思いながらそう呟いた。
「いくら親子でも、それはまずいでしょう。でも、家庭内ならそれも許されるか・・・」
橋下巡査が呟いている。
「父から、他にも『上層部からいろいろ犯罪の隠蔽工作を強要された』警察官がいた、と聞いてないか?」
「聞いていません。父上の同期で左遷されて昇進しなかった者たちに訊いたらどうですか?」
と只野巡査部長。
「そうだな・・・」
一昨日の夜、父の助言後、大嶋と池上に
『臼田や若松や霧島の部下で、出世して所轄署へ移動した奴と、その部下を探そう』
と話した。大嶋と池上は自分たちの所轄署で何か掴むだろうか?
今回の惨殺事件の本部が本庁へ移る前、城東署の大嶋と大森署の池上は所轄内で起きた今回の一人目の事件と二人目の事件を担当した。
大嶋と池上は、部下たちは事件に対して不審な態度を示さなかったと話していた。部下たちが、あえて不審な態度を示さないようにしていたなら・・・。父も同じように、不審な態度を隠していた可能性がある・・・。
三島はそう思っていると、只野巡査部長が疑問の眼差しを三島に向けた。
「父上の交番勤務に、何か疑問があるんですか?」
「昨夜、ふと気づいたんだ。なぜ、父は交番勤務になったか疑問になった。
訊いても答えないから、元の職場で聞くしかない、と思った」
三島はそう答えて只野巡査部長の態度を探った。
只野巡査部長の態度はそれまでのままだ。橋下巡査と高田巡も態度を変えていない。
「三島係長。もしかして、父上を疑ってませんか?今回の事件の関係者だと?
アアッ、すみません。出過ぎた発言でした!申し訳ありません!」
橋下巡査が慌てて三島に詫びた。
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