十七 四谷署の相棒

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 安藤刑事の説明を聞きながら、三島は、安藤は事件にずいぶん詳しいじゃないか、父と同様にこいつも被疑者か、と思った。  連続惨殺事件の捜査本部は本庁に設置されている。担当は刑事部捜査第一課だ。  一課の刑事たちは、惨殺事件の被害者、茂木(監察官、警視)、霧島(課長、警視)、臼田(副総監、警視監)、若松(本部長、警視長)の部下たちだった者が多い。そいつらは皆、臼田と若松の犯罪を隠蔽するのに荷担したはずだ。そのように考えたから、吾妻直輔参事官(警視正)と刑事部捜査第一課の東条肇課長(警視)は私と大嶋と池上に特命を下した。  吾妻参事官と東条課長は、我々を除いて誰も信用していない。おそらく、この安藤もだ。仮に、この安藤が被疑者とすれば、犯行時刻は・・・夜か・・・。  犯行現場をどうやって探した?犯行現場では過去に犯行は何もなかった。どの現場も廃工場になったのは数年前だ。  それ以後、現場が何かで使われるとしたら・・・、最近流行の廃工場見学ツアーだ。その先駆けとなったのは、廃工場を使った映画やドラマ製作だ。おそらく三つの事件現場は、マニアの間では知られた場所だ。被疑者だけが知っている場所ではない・・・。  私は大嶋と池上にこう話した。 『今後の犯行は無いだろう。臼田と若松と霧島の不祥事が判明して目的を果たしたはずだ。  被疑者が残した録音に、臼田と若松の不祥事現場にいる霧島の画像を、霧島に見せているような会話があった。  被疑者は、霧島たちが撮った画像を入手できる立場にあって、鑑識に詳しい所轄の警察官と断定していいな?』 『その線だな。本庁内の若手を除外するぞ。所轄署の方が動きやすいはずだ』  池上が同意して、大嶋も納得した・・・。  三島がそう考えていると、安藤刑事が立場上では知り得ない事を呟いた。 「被疑者は、臼田と若松が女を殺害する現場に霧島が同席していた画像を持っていたそうですが、画像を何処から入手したんでしょうね・・・」
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