きっかけは甘い声……?

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 透子たちが任されたのはテリーヌ。  リーダーのようなお姉さまは指示を飛ばしてビシソワーズに取り掛かる。手慣れた鮮やかな手つきは頼もしい。 (こちらには里見さんとフードプロセッサーという強い味方が付いている)  作業を開始したのだが、調理台に並んだ食材を確認してため息を落とした。 「レバーが入るんですね」 「もしかして苦手ですか? 香辛料をきかせてペースト状にするので大丈夫だと思いますよ」  苦手食材に露骨に嫌な顔になった透子に笑顔で応じる。 (……だといいんだけどね)  手順はこうだ。まずは下処理を終えたレバーをフードプロセッサーに白ワインと一緒に投入。ペースト状にしてから鶏ひき肉を合わせて生クリームや卵、ハーブなどの香辛料を投入。料理が苦手な透子はまるで里見の操り人形だ。  指示されるまま出来上がったのは、白っぽいハンバーグの生地。 「これを型に入れて蒸し焼きにすれば出来上がりです」  もちろんただ焼くだけではない。クリスマスらしくブロッコリーやパプリカでいろどりを添えるのだ。  ブロッコリーを手にバターを塗ったテリーヌ型を前に躊躇っていると、巡回してきた寺井が苦笑する。 「初めに三分の一ほど生地を入れて地層を作るように具材を挟むんです。ブロッコリーをツリーに見立ててうまく配置できるように頑張ってください」  すかさず飛んで来た指示に作業を再開する。 「うまく配置と言われても断面が見えませんから難しいですね」
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