きっかけは甘い声……?

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 笑顔で火花を散らす脇をすり抜けた里見が透子と並んで声を落とす。 「ちょっとお芝居に付き合ってもらえませんか?」 (――お芝居?)  透子にだけ聞こえるような小声。見上げた里見と目が合った。 「ああ、僕も予定が……! ちょうどエレベーターが来ましたね。一緒に失礼しましょう。ではまた」  爽やかな笑顔で透子の肩を抱くようにしてエレベーターに押し込まれた。あんぐりと口を開けて驚く彼女たちを残して扉が閉じた。 「……やれやれ、ですね」 「良かったんですか? 若くてかわいい子たちでしたよ?」  透子の抗議に応えたのは深いため息。うなじを撫でた息に驚いて距離を取る。 「女の子は若けりゃいいってものじゃないでしょう」 「そうですか。モテる人は余裕があって羨ましいですね」 「余裕なんてありませんよ」 「……絶対ウソだ」 「やけに突っかかってきますね。全部がウソってわけじゃありませんよ、僕は広瀬さんと話がしたかったんです」  地上に降りたエレベーターの扉が開くと里見に手を引かれて歩き出す。  通りに面した自動ドアを抜けるとひんやりとした風がほろ酔いの頬を撫でて通り抜ける。藍色に沈む街に輝くのは少し気の早いクリスマスイルミネーション。まるで宝石箱をひっくり返したような光の洪水の中を手を引かれて歩く。
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