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「恭平さんはどうしてあそこにいたんですか?」
「修……寺井は高校時代の友人なんです。ああいう料理婚活って女性ばかりが集まってしまってやむなく中止になってしまうことがあるんです。あいつは開店資金のためにやってるんで僕の会社の独身男性をかき集めてほしいって拝み倒されました」
肩をすくめて笑うと、届いたばかりの揚げたての唐揚げに目を細めた。
「僕はフランス料理よりもこういった庶民的な食べ物のほうが好きなんです」
「分かります。ナイフとフォークって落ち着きません。……お付き合いされてる方がいるんじゃないんですか?」
乙女らしからぬレモン酎ハイのジョッキを手に上目遣いでうかがうと、ビールで唐揚げを喉の奥に押し流して首を振った。
「――いないって言いませんでしたっけ?」
「ウソです。世間がこんないい男を放っておくわけがありません」
「いい男じゃありません。僕はお付き合いしても長続きしないんです。中高が男子校だったのがマズかったのかなぁ。今は仕事が恋人――って負け惜しみですね」
「へえ、意外」
「現実は恋愛ドラマみたいにはいきませんよ」
「そういうものですか?」
「そういうものです。イマドキの男は料理ができないと彼女もできないって脅されちゃいましたし」
なるほど、合点がいった。
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