63人が本棚に入れています
本棚に追加
「若いですから毎日だって平気ですよ。で、なにがあったんですか?」
うなった透子に照れもせずに答えて逸れた話題を引き戻した。
「実はね――どこかに携帯を落としちゃったみたいなの」
机に頬杖をついてぼそりと、つぶやいた。
「ちょっと、それってマズいでしょ!」
口をつけたコーヒーを吹き出しそうな勢いで吼えた。
「はい。非常にマズいです」
「どこで落としたんですか?」
「…………分かんないの」
眉根を寄せて心配するミナちゃんに消え入りそうな声でつぶやいた。
とりあえず無事に一日は過ぎた。
(……ほんと、ショックよ)
なくしたことに気が付いたのは自宅の最寄りの駅。電車で落としたのか、途中で落としたのか。バッグの中身をひっくり返しそうな勢いでかき回したのだが見つからない。
(きっとバチが当たったのかも)
出会ったばかりの男性といい感じになって居酒屋デートを済ませたばかり。
人懐っこい笑顔が印象的な彼の名前は――里見恭平。
常々から透子は詰めが甘いところがある。順調に見えて最後のステップでやらかしてしまうタイプ。
(初めての彼氏もそうだった)
透子が臆病になるアレが原因で見えない亀裂が入ってしまい。他所から現れた若くて可愛いトンビにかっさらわれた。
最初のコメントを投稿しよう!