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「透子もいい年なんだからそういう相手はいないの?」
などとキッチンから顔を覗かせたのは母。
思いっきり傷口に塩――唐辛子をすり込んでくる。
「悪かったわね」
(そんな相手――)
――いなかったわけではない。
思い返すのは大学時代からの友人、三島広樹。
背が高くて優しくて、笑うと片方だけえくぼができて……透子の理想の王子様だった。大学を卒業して三年目の冬、期待に胸を躍らせて出かけたデートで切り出されたのは――別れ話。
(私のハジメテを捧げた男は若くてかわいい後輩とめでたくゴールイン)
つまり、トンビに油揚げをかっさらわれた。
「私は一人で生きて行くって決めたんだもん」
なんて言っているが――姉の幸せそうな顔はちょっとだけ羨ましい。
虚勢を張ったところで負け犬の遠吠えである。虚しい。
「そんなこと言ってないで気分転換に習い事でもどう?」
習い事ねぇ、と渋る透子に母が笑顔で差し出したパンフレット。
手に取って目を落とせば美しい料理の写真。――どうやらクリスマス向けの料理教室の案内のようだ。
「母さんのお友達の寺井さんの息子さん。海外から帰国して開店資金を集めるために料理教室を始めるんですって。パンフレットの写真を見たんだけどイケメンよ。さっそく申し込んでおいたから花嫁修業だと思って行ってらっしゃい」
「はぁぁ!?」
※※※
もちろんまだまだ続きます!
気の向くまま、不定期で更新致します。(≧▽≦)ノ
コンテスト用に出せたらいいなぁと思いながらスタートです( *´艸`)
ラブコメ目指して…どうなることやら。お付き合いいただければ嬉しいです!
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