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身長が低いわけではない透子よりも頭一つ分も高い。さわやかなスポーツマンタイプで年齢は透子よりやや年上だろうか。
水色のオックスシャツにアイボリー色のカーディガンを羽織り、シンプルな黒の胸当て付きのエプロンが似合っている。
「あ、よろしくお願いします……っ」
思わず跳ね上がった声に驚いた様子だったがすぐさま笑顔に上書きされた。
すかさずチェックした胸のネームプレートは里見恭平。そのまま当たり障りのない世間話と自己紹介を終えて打ち解けると周囲を見回した。
「料理が嫌いなわけではないのですが……こういった雰囲気は苦手で」
「ああ、分かります」
そわそわと浮ついた雰囲気。特に笑顔のお姉さまの本気の目が怖い。
(料理の方に気合が入ってるのよね)
見ず知らずの男女が肩を寄せ合って仲睦まじく料理をするという光景は、流行りの婚活料理教室――つまり、母にハメられた。
(まるっきり合コンじゃないの)
波乱の幕開けを感じて透子は深くため息を落とした。
「皆さんこんにちは――」
女性たちの歓声に迎えられた明るい男性の声。
講師用のテーブルに両手を置いて室内を見渡すのは見覚えのあるイケメン。
(だいたい花嫁修業にフランス料理って……どんだけの玉の輿に乗せる気よ)
という、透子の心の声を読み取ったかのように寺井が柔らかな笑みを振りまいて説明を開始する。
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