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「詳しいんですね。里見さんは料理はお得意なんですか?」
感心して見上げているとすかさず別の女性から質問が飛ぶ。
「まさか。男の一人暮らしですからほとんどしません。普段は忙しいので外食で済ませてしまうのでほんのちょっと気が向いたときにやるだけですよ」
人差し指と親指をつまんでほんの少しを表現して笑う。人懐っこそうな笑顔に一気に空気が和んだ。
「初心者も失敗しないレシピだというので、だったらやってみようって思って。それに料理ができる男性の方がモテる気がしますしね」
そのままで大丈夫ではないかという指摘は笑顔でのみこんだ。
「目的は彼女さんのための手料理ですか?」
「困ったことにそういう相手はまだいませんね」
笑顔で意中の女性がいないことを確認して透子を勝手にライバル認定したらしい。こちらは早く終わらせたいと思っているのに。
「詳しいので料理は得意なのかと思っちゃいました」
「いえ、得意ではありませんよ。知識は全部友人の受け売りですし」
つぶやいて視線を流した。視線の先には笑顔の寺井。
(へぇ、そうなんだ)
簡単なレクチャーを終えて班ごとに分かれて「素敵なパートナーと一緒に楽しむためのクリスマスディナー」の調理を開始する。
じゃんけんで振り分けた作業のお相手は――里見さん。
(クジ運がいいのか悪いのか……なんだか複雑)
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