呪念満ちしその時に

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 それでも、荒川先輩は心底楽しそうだった。そのままの雰囲気で、 「じゃ、またね、高田さん」 唐突に別れを告げられる。イジメにしては爽やか過ぎるなと内心で笑う間もなく、池田先輩がいつもの微笑みで付け加えた。 「三上君、もう少ししたらここに来るはずだから」 「三上先輩が来てから、店に合流ですか?」  私が応じると、3人が弾けたように笑い出した。息を詰まらせながら、荒川先輩が説明する。 「違う。ロウと2人で帰って、ってこと」 「え、何で」 「気に入ってるでしょ、ロウのこと」  意味が、分からない。  …いや、意味は分かる。そうではない。  意図が、分からない。  …いや、最初のセリフの意図するところは、後者のセリフで推測できる。しかし、後者のセリフそのものの、真意がわからない。 「え、っいや、あの。何で」 「高田さんの混乱状態とか、激レアだね」  成瀬君がまだ笑いながら、声を震わせて軽口を叩く。
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