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「…でも、どうしたらいいのか」
「え、どうもしなくて良いよ?」
私の渾身の一言を、荒川先輩は軽くいなす。
「ロウに…は、限らないよね。誰だって、他人に何かさせようとしても、させないようにしても、どっちも無理だよ」
あまつさえ笑い声を上げる荒川先輩に軽く苛つきながら、しかしホッとした。間者じみた仕事を期待されている訳ではなさそうだ。
が。
「ロウが抱える怨霊に対抗できるのはもう、高田さんの怨念しかないんじゃないかなって思うんだ。それだけ」
爽やかな宣言に、不安が募る。こんなに訳のわからないことを悪びれる様子もなく言う人だったのか、と愕然とさせられた。
それに、私の名前が出てきて見逃すことなどできない。責めるように言ってしまう。
「怨念って何ですか」
「え、それは高田さんの気持ちそのものじゃない?え、無自覚?
怨霊は、ほら、ロウのロウらしさを阻んでるもの、みたいな? 泥沼に突っ込んじゃう盲目さとか、悪評に対してムキになったりスネたり素直に反応しちゃうとことか、変なしがらみとか」
「荒川君、三上くんに取り憑いてる怨霊はともかく、高田さんの恋心捕まえて“怨念”はないでしょ」
池田先輩のセリフもなかなか突き抜けてないだろうか。「怨霊はともかく」で切り離して良いのだろうか。
私の戸惑いなど意に介されず、会話は方向性を失ったまま進んでいく。
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