呪念満ちしその時に

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「高田ちゃん、オツ〜」  ドアを開けた途端に、会長の三上先輩が底抜け感抜群な明るい声を掛けてきた。場にそぐわない軽さを、それも読めずに押してくるコミュ障的なオタク臭さは、毎度のことながら少し鼻につく。ただ、本当に良い人で頑張り屋なので、それさえ三上先輩の面白味として楽しめる。  私がそんな甘い評価をしてしまうのは、後輩という関係の薄さ故かもしれない。  生徒会の中でも、私が所属するバドミントン部内ですら、同じ2年生から発せられる彼の評判はすこぶる悪かった。 「あ、コピーなら俺やっとくよ! 先生に話? コピーのついでに職員室寄ってく」  三上先輩のお調子者らしい声が、いつも通り部屋に響いた。  三上先輩は、仕事を厭わない。むしろ人に任せるのが苦手のようだ。他者を信頼できないというのではなく、面倒事を他者に押し付けて自分が楽をすることに居心地の悪さを感じている様子だった。  本当に、イイヒトなのだ。
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