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そんな三上先輩のやる気満々な態度に、部屋の中を少し冷えた風がざわりと通り過ぎた。
そこへ、
「ロウは原稿を作成してくれるんだろ? 世代の古いパソコン使うから大変なのに、いつもありがとな。急がせて悪いけど、そっち頼むよ」
副会長の荒川先輩が笑顔で口を挟む。ロウというのは、荒川先輩が使う三上先輩の呼称だ。
口の挟み方が神掛かっていて、口調の優しさや明るさが絶妙にマイルド。このセリフで空気が和らいだのが明確に感じ取れる。
実際、三上先輩が全ての仕事を背負う必要は全くない。むしろ、その行為で私たちが手持ち無沙汰になり、もっと言えば存在意義を失ってしまう。
存在意義を説いて仕事を強請るなんてみっともないことをやりたくないし、本音を言えば、余分な仕事を受けて拘束時間が増えるのは心底避けたい。
それを差し引いたとしても、“”他人に仕事を押し付けてラッキー”と割り切って考えられるほどスレた人間は、ここにはいない。だからこそ、三上先輩の気遣いは完全に空振っていた。
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