第1章「帝国へのいざない」

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時として、旅立ってから 20年ほどの歳月が経っただろうか。 もはや自分の生誕した 日にちなど覚えてはいない。 時の流れは空の明るさだけで 判断して生きてきた。 今、自分の生きる目的はただひとつ。 「自分の立っていた場所に戻ること」だ。 周りの人間との関りを大切にし、 愛を育み、信頼という絆を 結ぶことなど眼中にない。 自分の目的に近づくために 必要な事であれば、 それを演じることは容易いが。 そういった情というものを 信じ切っている者たちは、 自分が頬を緩め、 涙のひとつでも流せば、 心が救われるのだという。 馬鹿げた話だが本当らしい。
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