第1章「帝国へのいざない」

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しかし…。 どうやらここいらで 限界が来たようだ。 足はボロボロになり、 働ける場所もないような 砂漠を進んでいる。 金も食料も水分も尽きた。 走馬灯のように 過去を語っていたのは、 もう今際の際だと悟っているからだ。 どのみち人間は死ぬ。 それが今になっただけで、 何も珍しいことではない。 目指してきた自分の後ろ姿 というものも、 死ぬ間際には滑稽に 思えてきてしまった。 しかしそれなりに 楽しかったのかもしれない。 充実していたのかもしれない。 厳然たる事実として、 辿り着けなかったという 結果だけが残るが、 それもこれもあの世では なんの汚点にも 不名誉にもならないだろう。
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