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第1章「帝国へのいざない」
歩き続けていた―――
自分は、自分という名で、
ただひたすらに、まっすぐに、
歩き続けた。
とある書物に
「地球を一周すれば自分がいる」
と記されていた。
自分は自分の姿を見るために、
親の静止を振り切って歩き始めた。
10歳という未熟な少年が
途方もない旅に出た例は、
長い歴史の中でも
少ないのではないだろうか。
歩き続けるすがら、
様々な人に出逢い、物事を知り、
経験をして、今、
30年の歳月を数えても尚、
自分のいた場所には
辿り着きそうにない。
だが自分の背中が見える
その時まで、この歩みを
止めるつもりはない。
こんなことをして
なんの意味があるのかと、
口々に言う者もいた。
今思う。
意味は最後に結論付けるための
説明に過ぎない、と。
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