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顔をしかめていると、佐藤の隣にいた鈴木が机の上を滑らせるようにして俺に何かよこしてきた。小さな四角いパッケージに丸く浮き出た内容物――そういえば、鈴木は中学の時に付き合い始めた彼女といまだに続いているらしい。
「なにこれ」
わかっていたが、一応聞いてみた。
「ゴム」
「いや見ればわかるけど」
「パーティーだからな。ご祝儀が必要かなと」
「一番いらねーよ。イヤミか!」
俺は机から身を乗り出して、鈴木のブレザーのポケットにコンドームを突っこんだ。鈴木が倒れんばかりに椅子ごとのけぞってげらげら笑う。こいつもこいつで俺の現状を面白がっているに違いない。
そもそもなんなんだ、「失恋おめでとうパーティー」って。ご失恋おめでとうなんていう言い回しはついぞ聞いたことがない。九割は悪ノリだろうな。他人の不幸でメシがウマいともいうし、失恋ネタなんて暇な男子高校生にとっちゃ格好の餌食だ。
でも、ほんの一割くらい、茶化すことで俺を元気づけようという気持ちがあるのも伝わってくる。
二年になって佐藤と鈴木とはクラスが別れた。それぞれ新しいクラスでの人間関係もあるだろうに、ふたりとも俺の失恋の報告を聞くなり「大丈夫か?」と駆けつけてくれた。なんだかんだいってイイヤツらなんだよな。俺のことイジりすぎだけど。
問題は……。
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