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「別れたくないってごねた?」
今度は鈴木が聞いてきた。
「ごねてないよ、みっともないだろそういうの」
「バカだなぁユキチカは。女子の別れ話はジャブなの。こっちの『わかってなさ』をわからせたいだけなんだから、何に怒ってるのかちゃんと聞いて反省したら別れずにすんだかもしれないのに」
「もういいよ、なんとでも言えって」
すねて机に突っ伏すと、佐藤と鈴木が背中やら頭やらをバシバシ叩いてきた。
「またそのうちチャンスはあるって!」
「次いこ、次」
「俺のこと好きになってくれる人なんかいるかなぁ」
窓のほうに顔だけ向ける。いつもの景色に今はくすんだオレンジ色のフィルターがかかっている。ド田舎というほどではないが決して華やかな都会でもない町だ。高い建物などひとつもない中、遠く向こうでゴミ処理場の白い煙突だけがぽつんと建っているのがなんとも物悲しい。
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