1 裏アカ男子のそのこころは

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 画面をスクロールして、フォローしているアカウントの新着投稿が流れるタイムラインを眺めた。中学や高校の友達とだけ繋がっているリアル用のアカウントなので、さっきも話したような話題しか出てこない。明日は抜き打ちの小テストだとか、今度の体育祭が楽しみだとか、バイトの先輩がうざいとか。  そんな中でふと、知らないアカウントの投稿が目に止まった。  このSNSにはいいと思った投稿を自分のフォロワーに共有できる機能がある。そのため、時々こうして自分がフォローしていないアカウントの投稿が流れてくる。  それは飛行機雲の写真だった。画面の上部には「吉岡さんが共有しました」と表示されている。  吉岡っていうのは確か、同じクラスの、黒縁メガネをかけたあまり目立たない男子だ。いつも大きなカメラを持っているから写真部なんだろうな。それなら雲の写真を共有するのも頷ける。  俺はあまり写真には詳しくないが、でも確かに共有したくなるくらいきれいな写真だった。画面左から右側にある白い煙突に向かって、一面の青空を切り裂くように飛行機雲がかかっている。雨上がりに撮られたものらしい。写真の下のほうに写りこむ銀色の手すりには水滴がついていて、それが光を反射してきらきらと輝いていた。 「あっ!」  ふと写真の右のほうに目をとめる。その白い煙突に見覚えがあったのだ。
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