1 裏アカ男子のそのこころは

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1 裏アカ男子のそのこころは

「品田ユキチカくん、この度は、ご失恋おめでとうございまーす!」 「おめでとー!」  お調子者の佐藤が乾杯の音頭をとり、俺たち四人はペットボトルの下っ腹をぶつけあった。夕日が教室を照らすついでみたいにペットボトルに差しこんで、透明な炭酸飲料をくすんだオレンジ色に染めあげている。  オレンジは失恋の色だと俺は思う。青春といえば青が、陰口といえば黒が、恋といえばピンクが思い浮かぶのと同じように。  ヤんなっちゃうよね。  たまらず炭酸飲料を一気にあおると、外国のグミとか飴みたいな人工的な甘ったるい味が舌の上に広がった。 「うっわ、まず」  舌が痺れるくらいの強炭酸なのにちっともすっきりしない。むしろ、飲めば飲むほど口の中がべたべたしていく。  わけがわからないままラベルに視線を落としてびっくりした。これ、中庭の自動販売機で一番安いやつじゃん。まずすぎるからうちの学校ではもっぱら罰ゲームのネタになっているもので、俺も何度か飲まされたことがある。  おごりだ、感謝しろよ、と言ってこれを四人分買ってきたのは佐藤だったかな。はたして失恋した俺を本気で慰める気があるのだろうか。
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