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「そろそろ出る?」
「えー。もうちょっと。もうちょっと話したい。…だめ?」
酔ってる女は上目遣いという技を躊躇なく使うものである。
私も例外なくその技を使用してみると、なんと永戸さんの瞳が揺れ、妙にわざとらしい咳をするではないか。
「じゃあ、…あと少しだけ」
私の技、効いてる!
シラフなら絶対できない技なので今回が初使用だったが、これから常時使用に変更することも考慮してみようか。
もちろん永戸さん限定だがな!
「永戸しゃんは休みの日は何をしているの?」
「うーん。なんだろう。体動かすのが好きだからジム行ったり、友達とスポーツしたり、とか」
「へぇ、運動好きなんだぁ。だからこんなに良きお体をしてるんだねぇ」
酔ってる女は躊躇なく異性の体を触ってしまうものである。
私もやはり例外ではなく、永戸さんの太く逞しい腕を軽く撫でたが、驚いた素振りでこちらを向くのですぐやめた。
「アイアムソーソーリー」
なんとなく英語で謝ってみると、永戸さんはまるで私の脳内思考を見透かそうとするかの如く双眼を細めた。
シラフだったら萎縮してしまいそうな眼差しだが、人は酔うと怖い物知らずである。
その目で私の何を見ようとしてるの?私の心を読み取りたいの?それともその目には服を透かして見る能力でもあるっていうの?いやん!私の何を見ようとしてるの!ブラの色?デザイン?いいよ!全部見て!
酔っている私はそんなことを考えていた。
「一つ訊いてもいい?」
「もちろん!今日は無地のベージュだよっ」
「…何が?」
「何がって。やだぁもう。知ってて言わせるなんてぇサディスティックぅ!そうだよ、下着の色だよぅ」
語尾だけ恥ずかしがって言ってみると、一瞬険しい顔をした永戸さんは次にはビールを一気に飲み干した。
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