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放心していると、寝室の引き戸の向こうから食器が当たるような音がし、そしてお味噌汁を連想させるような良い香りがしてくる。
私は徐にベッドから降り、部屋の引き戸をゆっくりと引いた。
二人用のダイニングテーブルと椅子があり、その向こう側は台所。
そしてこちらに背を向け何かを調理しているのは、紺色のエプロンをした永戸さんだ。
やっぱり私はお持ち帰りをされたんだ…。
引き戸の音に気づいたのか、永戸さんが振り返る。
「あ、起きたんだ。おはよう」
「お、お、おはようございますっ」
朝日を浴びる京介お兄さんがかっこ良すぎて眩しい。
黒いスラックスと肌触りの良さそうな白いTシャツという非常にシンプルな恰好をしているのに、寝ぐせがついた黒髪とエプロン装備により、ええ男度ましましである。
私は昨晩、このええ男に抱かれたのか…。
なんとなくそんな気がしてならなくなって頬を染めてしまうと、永戸さんが歩み寄って来た。
「二日酔いになってる?」
「ううんっ。すごくすっきりで、健全な気持ち…」
「健全?」
「う、うん。あの、それで、私達…、昨晩は…」
「ああ…。早瀬さん急に寝ちゃって、どうしようもなかったから俺の家まで運んだんだよね」
「そ、そうだったんだ…」
泥酔して京介お兄さん宅に運ばれ、その後無防備な私に我慢できず…、という感じか。
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