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何をするのだろうと見ていると、永戸さんはダイニングテーブルの横にある棚の引き出しを開け、中からハサミを取り出した。
刃物の登場とそれを掴んで寄って来ることから急に緊張が走り出す。
「危ないから動かないで」
冷静な口調で刃の先を私の首元に向けてくるので、怖くなった私は慌てて永戸さんの手を掴んで止めた。
「な、なにする気っ?」
「その首のやつ切るだけ」
「首のやつ…?」
なんかあったけ、と手を伸ばすと、首には何か細いものが巻かれていた。
「え、これ何?」
訊いたと同時にその細い物は切られ、はらり、と私の太ももにそれが落ちる。
それは赤色のリボンだった。
掴み取って見てみると、黒い油性ペンで『トウ子』と書かれている。
…これが首に巻いてあったって……まるで。
「…首輪?」
ハサミを引き出しにしまって座り直していた永戸さんに訊くと、彼は先ほどと同じような後ろめたさのある顔をする。
「ごめん。酔ってて」
「……え、もしかして2パーセントってこれ?」
「そう、それ」
「…えっ、なんで!?」
普通胸を触っちゃったとか、お尻揉んじゃったとかじゃないの!?
「飼育してほしいとか言ってたから、多分その名残というか。まあ、酔った勢い」
それ以外は本当に何もしてないから、と永戸さんは補足しながら箸を掴み取り、冷めないうちに食べて、と私にも勧める。
作ってくださったことへのお礼を言いつつも、リボンの首輪から目を離すことができない。
胸でもお尻でもなく首輪の装着だったことへの衝撃が過ぎる。
京介お兄さんが、眠っている私に首輪…?
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