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今頃になってようやく、だんだんと恥ずかしくなってくるんだから、私の羞恥心はたった今起きたに違いない。
静寂に耐え切れず「ごめん。あの…。今の気にしないで」と消え入るような声で謝罪し、やっと箸を掴み取った。
失敗した。
大失敗だ。
折角の朝チュンイベントなのに、起きてすぐだったせいもあって、『はにゃにゃ~』と意味もなく言ったり、『ふわわぁ~』って声に出して欠伸したりするような寝起きまで可愛い女を演じるのも忘れ、痴女みたいな発言で永戸さんをドン引きさせてしまった。
でも、昨日の今日で首輪を装着する永戸さんも悪いよ、ずるいよ。
そんなの、えっ!?飼いたかったの!?って普通誰でも思っちゃうよ…。
うえーん。それにしてもこの白米、うめぇ。
頭の中で一人喋っては温かいご飯をはむはむと食べていると、「早瀬さんさ」と声をかけられた。
「はい…?」
「違ったら悪いんだけど、もしかして仕事か何かで悩んでる?」
「え?」
「昨晩もベッドで泣いてたし」
「啼いてたぁっ!?」
「…多分早瀬さんが想像する方じゃない」
「えっと、…あんあん?」
「…違う。そうじゃなくて、眠りながら涙流してた」
「涙を?私が?」
「うん。助けてとかすみませんって何度も言ってたし。あと、その残した三本も抜いてやる、って苦しそうに」
夢の記憶は残っていないけど、その文脈からすると私は仕事関係、とくに上司の悪夢でも見ていたのかもしれない。
「昨日飲んでる時も、仕事が辛いって愚痴言ってたし。今みたいに飼ってほしいって他人に言ってしまうのも普通じゃないっていうか。まあ…、酔ってたとはいえ寝てる人に首輪つけてた俺が言うのもなんだけど、早瀬さん、なんかメンタル的に弱ってるのかなって」
確かに普通じゃないっていうのは自分でも思う。
けれどそれを恋のお相手である永戸さんに真面目に分析されてしまうと、恥ずかしいし情けないし、自分のダメさとヤバさが思い知らされて胸が痛い。
私ってやっぱりどうしようもないなぁって。
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