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「さ、冴島さん」
「また濃そうなコーヒー入れてるじゃん」
「え、あ、まあ。うん」
隣に並んでインスタントコーヒーの瓶を開ける動作を横目に、ジリジリと後退する。
大抵はここで鉢合わせするとダラダラと世間話するけど、今しがた私の恥ずかしい願望を聞かれてしまったので逃げるが無難な気がするのだが。
「ていうか朝から思ってたけど、今日顔薄いな」
「へっ?あー…、今日は化粧する時間がなくて」
話しかけられたら答えなければならないし、顔は確かに薄い。
今朝は家にも一応帰って着替えと洗顔だけ済ませ会社に向かったので、メイクはアイブロウしかしていないのだ。
「そういや資料送ってねーじゃねーかって、朝から部長怒り狂ってたもんな」
「う、うん」
「間に合って良かったじゃん」
「まあ、怒られたけどね…」
今回も例外なく雑談モードなのでしょうがなく居残り、目を合わさないようにコーヒーをチビチビ飲んでいたが、冴島さんに先ほどの発言を茶化す様子がないことに気づいて胸を撫でおろす。
きっと冴島さんにとったら、私に飼育されたい願望があることなんて興味を駆られる案件にはならないのだろう。
そうだよね、世の中にはいろんな願望を持つ人がいるのだからいちいち反応してたら疲れちゃうよね。
「で、早瀬飼われたいの?」
興味駆られてたーっ!
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