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栄養食品を製造販売する会社の営業として働き始めて五年。
他の同僚と比べると成績はいまいちで、基本的な事務作業ですらいまだにミスをよくするので鬼上司が怒り狂う事例が多発するが、たまに「これ飲んでもっと頑張れ」と自社商品の栄養ドリンクをくれるので上司には心の底から嫌われているわけではないと思う。
会社がブラックだってことはわかっているし、成績不振やお説教、そして残業が続く日々は精神的にも体力的にも確かに辛かったりするが、働き慣れた会社を離れ別の職を探すのも、それはそれで面倒でちょっと億劫でもあるのだ。
「その考え方がさ、」
姉は眉間に皺を寄せ何か言及したげだったが、怖い夢でも見たのか真由が突然泣き出したため意識はそちらに向けられた。
そのうち圭吾さんも帰ってきて購入品を収納する作業だったりで忙しくなってきたので、私は帰ることにした。
本当のところは、姉を溺愛する圭吾さんと近所でも美人妻として有名な姉が仲睦まじくしている様子を見るのが堪えるからだ。
姉のことは大好きだけど、時々無性に劣等感を抱いてしまう。
美人で優しく学校の成績も良かった姉と、ひねくれ者で何をやらせても平均以下の私は、両親や親戚からよく比較されていた。
姉と同じ習い事をしたけど、発表会やコンクールで高成績を残すのはいつも姉で、私は舞台上で音程を外したり緊張しすぎて屁をこいてしまったりいろいろド忘れしたり、結局毎度笑い者で終わる。
姉は世間でいう良い大学に入りミスコンにも選ばれ、雑誌の編集部に就職。新人にも関わらず華々しい成績を残していたが、大学時代から付き合っていた圭吾さんとの間に真由を授かったことで寿退社。
私は複数の志望大学にことごとく落ち、滑り止めの大学に入学。ミスコンではイベントスタッフをして椅子などを運んでいた。
大学時代に付き合った人はいたが、姉を好きになってしまったという理由でフラれ、それ以降は自分が貢がなければ生活できないような所謂ダメンズばかりを好きになり、まともな恋愛をしてこなかった。
『燈子、少しはお姉ちゃんを見習いなさい』
それがお母さんの私に対する常套句。
姉がいつも日向にいるなら、私はいつだって日陰にいる。
その劣等感が邪魔しているのか、私は自分が辛い時、家族に素直に助けを求めることができない。
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