カピバラの飼育員

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 なんという奇跡だ…。  これはよもや、日々辛い労働を虐げられ肉体的にも精神的にもいろいろやばくなっている私へ、そろそろ癒しイベントをあげないと何をしでかすかわからないぞこの女と危惧した大いなる存在が、私の傾きかけた理性を正常に戻すために与えたもうた癒しイベントかもしれない!  おおお…、感謝いたしますっ!  大いなる存在に感謝の念を伝えてから、私は生唾を飲み込み、飛び切りの笑顔を浮かべ真横の憧れの君へ声をかけた。 「きょ、きょ、京介お兄さん!」  だが声のかけ方を間違えてしまったかもしれない。  いきなりお兄さん呼びする息の乱れた女なんて、そりゃあそうやってビビった感じの反応をされてもおかしくない。  「あ、いや、ち、違うんです!あの、カピバラの飼育員さんですよね?向日葵動物園の!」 「あぁ、はい。そうですけど…?」 「いやっ、あのですね。先日姪っ子と動物園に行かせていただきましてですね!非常にその、ベイビーちゃんたちが可愛くてですね!あの、そうしましたらですね、隣にいらっしゃる飼育員さんにも憧れちゃいまして!もうあれ以来、毎日毎日京介お兄さんみたいになりたいとですね、騒いでいましてですね!あの、姪っ子がですよ?それであの、偶然お見かけしましたものですから、姪っ子の代わりに声をかけちゃったみたいなですね!はい!」  緊張のせいで喋り方がおかしくなってはいるが、咄嗟に姪っ子にいろいろとなすり付ける小賢しい判断ができる自分に感心する。  でも京介お兄さんも、突然現れた二十七歳の息の乱れた女より、四歳の女の子からの好意の方が安心できると思うのだ。
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