飼育ごっこ

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 ちなみに早瀬は絵心が皆無で、俺には薄目で見て辛うじて青虫に見えるものを描いていたのに「シマウマを描いたよ」と堂々と京介兄さんに見せていた。  そしてやはり京介兄さんの反応は「燈子。芸術的だね。個性が溢れてて楽しい絵だよ。天才!」とベタ褒め。  それを見ていた部長は悔しそうだった。  その後も洗濯を畳む作業をさせられたり、ミサンガ作りをさせられたのだが、俺と部長はどう見ても早瀬より良い仕上がりをしたのに、理不尽な理由をつけられ怒鳴り散らされ、早瀬はどんなに悪い出来でも褒められ、「ここはこうするともっといいかも」「ここはいいけど、ここはちょっと間違えてるね。こうするといいよ」と優しく指導を受ける。  圧倒的な扱いの差を感じさせられる『飼育ごっこ』だったが、何故か途中から部長は文句を言わなくなっていた。  多分疲れてどうにでもなれとやけくそになっているんだろうと、俺は思っていた。
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