笠井 忠相は口説かれる。(笠井)

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笠井 忠相は口説かれる。(笠井)

幼馴染みの事は、確かに対女性での断り文句に利用させてもらった事がある。 だけど、まさかそれを聞かれていたとは。 あの時正直に、貴女達では気持ちが動かない(勃たない)と言えば良かったか…。 「大切な人がいるんだと思って、これ以上好きになる前に諦めるつもりで、店に行くのをやめました。」 斗和くんは、俺の手を握ったまま伏し目がちになりそう言った。 使い古された文言だとは思うんだけど、本当に睫毛が長いのでつい見蕩れてしまう。 綺麗な瞳が見えるのも良いけど、この長い睫毛がよくわかる角度も色気があって良い。 こんな子が、俺を好いててくれてたなんて信じられないな…。 「ずっと、忠相さんに会いたくて通ってたんです。 何時か告白したくて。 でも、Ωの方でもたまに同性が駄目な方はいらっしゃるから、男の俺じゃ駄目かもって思ったり。」 「ああ…そうですね。俺の友達にも、女性αじゃなきゃ受け入れられないって奴もいますね。」 俺は脳裏にΩ仲間達を思い浮かべた。 大概は男女α何方もいけるって人が多数だけど、中には女性Ωで同性αが良いという人もいるし、男性Ωで女性αじゃなきゃ無理って人もいる。 人の数だけ性嗜好はあるからな。 「はい。だから、その…臆病になってたというか。 」 「斗和くんみたいな人でも、そんな事あるんですね。」 「お恥ずかしいんですけど、こんな事初めてで。」 「こんな事?」 「…初恋、なんです。 貴方が。」 少し頬を赤くして、斗和くんは言った。 …初恋… 「性的経験が無い訳では無いんですが、誰かをこんなに好きになったのは…初めてです。 だから、どうして良いのかわからなかった。」 だよなー。 そりゃこんな容姿してる人、放っとかれる訳がない。 「忠相さんは俺の理想の人です。モロにタイプなんです!俺は貴方と番になりたい!!」 「つ、番に…。」 俺と番になりたいんだ…。 それって、俺とセックスしたいって事だよな。 俺で勃起するって事…。 ボッ、と一気に顔に熱が集まった。 …こんな綺麗な男の子でも、勃起するんだ…。当たり前か。男だもんな。αだもんな。 でも、でも、それってつまり、俺で興奮出来るって事、なんだよね?斗和くん。 え、本当に、俺なんかで? 「あの…付き合った場合って、その…斗和くんは、俺でイケんの?」 性の相性って関係性を左右する事だから、ズバリ聞いとく方が良いだろうと思って、聞いてみた。 いやでも、いくら何でもストレート過ぎた? もっと歯に衣着せるべきだった? 口にした後で少し後悔してチラッと斗和くんを見ると、斗和くんはテーブルに身を乗り出して来て、俺の目をじっと見ながら力強く言った。近い近い近い。 「俺は忠相さんを抱きたいし、忠相さんに抱いて欲しいです。」 「あ、そうなんだ。」 「忠相さんはセクシーです。」 「…せ、せく…」 びっくりした。 リバなのか、斗和くん。 猛者だな斗和くん。 そんな曇り無き綺麗な目をして言わせちゃって、ごめんな。 でも、安心した。 「俺も、斗和くんを抱きたいし、…斗和くんが俺を抱けるんなら、抱いて欲しい、な…。」 俺と斗和くんはもしかしたらすごく相性が良い相手なのかもしれない。 俺はこんな図体のでかい、男臭いΩだ。 Ωだと知らない人間達は俺に抱かれる気で来る連中ばっかりだ。 けれど、俺はΩなんだ。 体や本能は、受け入れたいと望んでいる。 欲しくて欲しくて飢餓感に苛まれて、気が狂いそうなままやり過ごすのが俺のヒートだ。 今迄 満たされた事のない、俺の、αを受け入れる為の器官。 俺は25になるこの歳迄、処男だった。
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