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——数日後、関東某所。
「では、大親分。約束通り3000万持って当分姿をくらましますよ? ほとぼりが冷めた頃に、顔と名前を変えて復活させてくださいよ?」
「ああ。その時は、任せておけよ。新しい組を持たせてやる」
「酷い奴だな? 静雄は一番お前を慕ってたじゃねーか? ハハハハ」
「酷い奴だなって、そう言う河田の兄貴も笑ってるじゃねーかよ? そもそも、この計画は兄貴が考えたんだろ? 車のすり替えは、ほんとよく考えたよ」
「あんなもん古典的な手だよ。防犯カメラの死角になってるヤクザと何も関係無い民家の車庫に、お前の車を隠して、そこの家の主人の車で次の日に隠れ家まで送らせる。お前の車はほとぼりが冷めるまで、あの家の車庫に眠らせて置けば良い。頃合いを見て処分する。誰も、あの家の親父が俺ん所の消費者金融に借金してるとも思わないだろう。300万帳消しなんだから、向こうにもやる価値はある。ヤクザ敵に回す度胸なんて、あのオッサンにはねぇし。誰にも言わねーよ」
「300万て、元々10万とかだろ?」
「そりゃ闇金だからな。あははは。金庫にも、お前が事前に3000万があると組の奴らに言ってただけで、元々金なんて入ってねえ。——それにしても、静雄はお前の為に必死だったぜ? ちょっと、可哀想だったよ」
「仕方ねーだろ? 生け贄なんだから。あんなもん、代々飼ってるなんてほんと誰も想像も付きませんよ? 大親分、あれ何何ですか?」
「知らん。大昔から組で出た死体の処理をしてくれてた。その恩義を返すには、美味い餌を何年かに一回与えないといけねえ。そうしねえと、怒って今まで喰ったものを吐き出すらしい。本当かどうか知らねーが、そうなると俺の首がいくつあっても足りなくなる」
「美味い餌か……。」
「ああ。——美味い餌だ。俺達にとって、価値のある人間て事だ。静雄は生きてりゃ、かなり組の役にたった。頭のキレる男だったし、度胸も忠義もある。今はヤクザになろうなって若い奴も居ないからなぁ。失うのは大痛手だよ。ヤクザなのに、良い奴だったし。今日は静雄の為に、3人で心行くまで飲もうや!」
終わり
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