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人々は彼女を神のような存在だと思ったのか、それとも化け物の類いだと考えたのか、それは分からないが、何かを何かに捧げることで天災を止めたかったのだろう。
人々が供物という名の生け贄に選んだのがこの少年だったのだろう。
少年の左手に握られていた手紙には『貴方様にこの子を捧げます。どうか我らの危機をお救い下さい。』といった事が書かれていた。
「……そんな力、私にはないのに。」
人々の鬱々とした考えを想像した彼女は、独り言をポツリと呟くと手紙を放り捨て、少年の治療を始めたのだった。
ドクウツキの実はかなり強力な毒性をもっている。しかも速効性がある。
いつ、どれ程の量を食べたのか定かではないが、あまり時間はなさそうだ。
普通であればこの少年は助からないだろう。
しかし彼女には不思議な術が使えた。
彼女が魔女と呼ばれる所以のひとつはこれだろう。
彼女の脳内の知識、想像力、それを現実にするための術式。
それは後に魔術と呼ばれるものだった。
床に描いた魔術式の上に少年とその辺で捕まえたネズミを並べ、まずは空間移動術によって少年の体から毒物を取り除き、それをネズミの体へと移す。
しかし、少年の痙攣は止まっていない。
彼女は次に回復術を行った。
痙攣を起こしている神経を落ち着かせ、隣のネズミから生命力を少年へ移し回復させる。
ネズミは生命力の枯渇と毒によって死んでしまうが、これだけの魔術を使うのに代償が必要だ。
これで駄目であれば、それがこの少年の運命だったのだ、と諦めるつもりだった。
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