筒見斐という少年

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「おいおい、さっきからだんまりだなぁ。そうやってうずくまってたって、誰も何も決めてくれねーぞ。ちゃんと考えてんのか?」  舌打ちしながら、加賀は言った。さっきから筒見は、膝を抱えて座り込んだまま、一言も発しようとしない。俯いているせいで表情まで見えないが、漂白剤を全身にぶちまけられたみたいに、白い頬がさらに白くなっている。 (ちっ。こっちの声など聞こえちゃいねーってか。これだから文系のお坊ちゃんタイプは。こりゃあもう、どっちを選ぶか決まりかな)  悩んだふりをしているだけだ。こいつは。結局、最後には自分が生き返る方を選ぶのだろう。こんなものが見たかったのか、神は。 「おーい。そろそろいーか? 次もつまってるからなぁ。そろそろ結論、出してもらわねーとな。ケ、ツ、ロ、ン。わかる?」  投げやりな感じで煽ると、筒見はか細い声で頷いた。 「はい……。決まりました」 「ほう?」  加賀の三白眼ぎみな瞳がぎらりと光る。悪趣味な神につられている自覚はある。まぁ生前から自分も賭け事は好きだったから仕方ない。 「俺は、……神谷を選びます。生き返るのは俺ではなく、彼です」 「……は?」  いつの間にか筒見は顔をあげていた。弱々しいだけだった表情が厳しくひきしまっている。  躊躇いはみえるものの、覚悟を決めた目をしていた。それが加賀の心をわずかに揺らす。  だが、まだまだだ。  最終選別の間の苛烈さは、ここから始まる。    
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