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「まぁ、何を想像したのかは武士の情けで聞かないことにするよ。 だから、そんな根も葉もない因縁をつけるのは止めて、自分の席に戻ったらどう?」
理詰めでいけば、学年首席である浩太に敵うはずもない。
「…!」
敵わないからこそいつか打ち負かしたい、というプライドを粉々に砕かれた委員長は涙目の顔を見せまいと踵を返すと、慌てて後を追う取り巻きたちを引き連れ教室の外へと出て行った。
(やれやれ)
何とか煙に捲けた、とため息をついていると、隣で腕組みをしたまま首を捻っている涼を見て目を丸くする。
「どうしたの?」
「いや~…やっぱアイツ変わってんなって思って。 べっつに誰とダレがイチャコラしよーが、お前にゃかんけーねーだろうがって言ってやろうかな。…なぁ?」
「…そうだね」
どこまでも人の心の機微には鈍感にできている涼の性格を羨ましく思いながら笑った浩太は、HRの時間を告げるチャイムの音で涼を急かし、自分も席に着くことでいつもの代わり映えしない日常へと戻って行く。
(…委員長見て思いついた。――今度はシチュエーション変えでリョウのこと誘ってみようかな)
教室に担任が入り、それなりのぴりりとした空気が流れる中、真面目な表情をして話に耳を傾ける浩太がそんなエロいことを考えるというのも、
何ら表裏ない日常だ、ということで。
END。
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