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……家事の中でも私は掃除が苦手だった。俗にいう、捨てられない人。
……でも、彼に叩きこまれたから、目の前に広がる部屋はつるっとした白いフローリングの床がよく見えて急なお客様も出迎える余裕があるくらいには綺麗に保たれていた。
……それでも、疲れてついつい床に置いてしまったバッグを蹴られて中身のリップや化粧品を吹っ飛ばされて壊されたことは……何度……あっただろうか
「何でまたここに置いてんだよ! ここに置かれんの嫌いだっつてんだろうが!」
私のお気に入りのピンクの肩掛けバッグが宙を舞い。
中身がばらけて綺麗な白いフローリングの上に散らばる。
衝撃でお気に入りの桜色のリップの蓋が空いてしまいフローリングにピンクの傷跡を残していた。
「……置いたんじゃなくて、落ちちゃったみたいで。トイレに行きたくて、一旦テーブルの上に」
「落ちるようなとこに置くんじゃねえよ! 俺の通行を塞ぐものは嫌いだっつてんだろが!」
「ご、ごめ……」
「はぁ~」
部屋の扉が爆発して飛び散るんじゃないかって音を立てて部屋に引っ込んだ彼に、私は何も言えない。
それでも私は彼に嫌われたままじゃいたくなくて一生懸命片付けて、泣く泣く買ったばかりのリップや割れたヘアピンケースをごみ箱に捨てた。亡くなったおじいちゃんからもらったピンクのバッグのチャックは残念ながら壊れちゃったから使えなくなったけどそれは流石に捨てれなくて、見つからない押し入れの奥にしまい込んだ。
辛い
その二文字が頭を駆け抜けるけど私がしっかりしないせいだ、私が悪いんだと言い聞かせて。
それに、彼だって悪人じゃない。
「これで物を置きやすいだろう」
そう言って、私のためにラックの物置を作ってくれた。
幅とか高さとか私の持ち物に一切合わなくて使いづらいけど、それでも少し物が傷もうが無理矢理つめたら入るって実演してくれたからこれから同じミスしないように頑張ろうって私は気合を入れなおした。
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