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……だから私は所々刃こぼれをした鉛色の刃を持っている
半年間使い続けた刃は私の努力の傷を忠実に刻んでいた。研ごうとしたけど、研ぐということすらも知らなかった私が気づいた時には手遅れになっていた。それでも、今もなんとかある程度は切れる。
……今までふがいなさ過ぎた自分への罪も含めて
思いっきり痛い思いをしながらも死ぬというゴールがあればやり遂げれるだろう。最後までやり切るということや努力に関しては自信があった。
……ついでに、綺麗になった白い床もぐちゃぐちゃにしちゃえ
何度も彼に蹴られ犠牲になったカバンや化粧品。テーブルの上に少し置いていただけでも「邪魔」と捨てられた買ったばかりの化粧品たち。私の机がないからそこにしか置く場所がなかったのに、わざわざゴミ箱に黙って入れて私が気づいて声をかけてから「邪魔だから捨てた」と冷たい声で言い放たれてきた。お金がないからなけなしの金額で必死に買って大事に使っていたのも知らずに。
……ごめんね、ありがとう
ぐっと刃を手首にあてがった。凸凹の刃先だからか、チクりとした痛みもなく鉄の冷たい感覚があるだけ。ちょっとギザギザとした感覚もあるかな。ここまで刃こぼれを起こしていたんだと包丁に申し訳なくなった――でも、これをスライドさせたら……きっと私は今までにない汚し方をすることでしょう。
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