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ぐっと、力を入れた。
その時だった
リィーーーン
私のスマホが着信音をけたたましく鳴らした。
凄まじい音に私はびっくりして包丁を落としてしまった。床にも傷つけず落ちた包丁。つま先の横に落ちたそれに少しヒヤっとしてしまった私は、死のうとしていたのに何を思っているんだかと苦笑した。
さっさと終わらせよう
そう思って、出もせずに切るつもりで手に取った私はうっかり通話ボタンを押してしまったようだ。「もしもし」と知った声が聞こえた。
ペンをくれた友人の声であった。
「あ……」
もしもし、さえ声に出なかった。
何故だろう。
「最近どう? 大丈夫ー? もし悩みがあったら聞いてあげるからね。ていうか私の話も聞いてほしくってさ」
「え、あ……ど、どうしたの」
そう言えば急に電話するには珍しい友人。
ついそう尋ねた私に返ってきたのは「フフ」という笑い声と。
「束縛旦那と別れちゃった」
元気そうな友人の声だった。
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