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彼女は記憶を手繰り、話を続ける。
「火の玉は好んでひとを襲うことはなく、ただふわふわと彷徨うばかりでした。でも漂う先々で村や山野を焼き尽くしたので、当時の有力な貴族が強い冒険者たちを集め、火の玉の退治に向かわせたとか」
アルヴィーが身を乗り出した。
「それで、結果はどうなったの? “大災厄”の中でも、ルカニア連邦に現われた“狂気の太陽”は、正式な記録が乏しくて。宗主国のルカニア王室も“魔術結社中央会議”もまともな記述を残していないから、民間伝承が頼りなのよ」
怪少女が好奇心いっぱいの口調で先を促す。
フィーネも笑みで応え、伝承の記憶を言葉に綴る。
「領主さまが集めた百人を超える冒険者は、何十回も火の玉に挑みました。でも火の玉のあまりの熱さに、冒険者たちの武器は熔け、呪文の書物も燃えてしまって。焼き尽くされたり逃げ出したりして、冒険者たちはだんだんと数を減らしていきました。けれど百回目の戦いで、生き残った九人の冒険者がついに……」
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