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ほんの刹那の沈黙を容れて、アルヴィーも低く抑えた口調で問いを投げた。
「それじゃあ、“狂気の太陽”を封じたボトルの鍵も、アナタたちは開けられる……?」
「ハルトなら」
即座に答えたフィーネの頬が、ほんのりと熱くなる。
「彼が解き明かした秘鍵の謎が、ボトルの鍵の構造でしたから。ハルトなら開錠できるはずです」
彼女は言葉を切った。
居合わせる皆が口を閉ざした今、河原に響くのは天幕を打つ雨音と川のせせらぎ、それに弾ける薪のなく声だけだ。
ふと、フィーネの見ている前でエルマンの頬が緩んだ。
にんまりと笑う彼の表情は、焚火の刻む陰影のせいか、一癖も二癖もありそうに映る。
エルマンの想いが全く読めず、つい怪訝な眼差しを注ぐフィーネの唇が勝手に動いた。
「あ、あの……」
エルマンが、すっと立ち上がった。
そしてフィーネの前に音もなく立つと、胸に右手を当てて、わずかに膝を屈めた。
それでも優に彼女の頭一つ分は高いところから、伏し目がちの視線を落とす。
「いいでしょう。僕も貴女が危難を避けられるように、手を貸そうじゃありませんか、フィーネ嬢。その代わり……」
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