第一章 旅人たち ――雨の夜のヴィオロン――

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 ほんの刹那の沈黙を容れて、アルヴィーも低く抑えた口調で問いを投げた。 「それじゃあ、“狂気の太陽(クレイジー・サン)”を封じたボトルの鍵も、アナタたちは開けられる……?」 「ハルトなら」  即座に答えたフィーネの頬が、ほんのりと熱くなる。 「彼が解き明かした秘鍵の謎が、ボトルの鍵の構造でしたから。ハルトなら開錠できるはずです」  彼女は言葉を切った。 居合わせる皆が口を閉ざした今、河原に響くのは天幕を打つ雨音と川のせせらぎ、それに弾ける薪のなく声だけだ。  ふと、フィーネの見ている前でエルマンの頬が緩んだ。  にんまりと笑う彼の表情は、焚火の刻む陰影のせいか、一癖も二癖もありそうに映る。  エルマンの想いが全く読めず、つい怪訝な眼差しを注ぐフィーネの唇が勝手に動いた。 「あ、あの……」  エルマンが、すっと立ち上がった。  そしてフィーネの前に音もなく立つと、胸に右手を当てて、わずかに膝を屈めた。  それでも優に彼女の頭一つ分は高いところから、伏し目がちの視線を落とす。 「いいでしょう。僕も貴女が危難を避けられるように、手を貸そうじゃありませんか、フィーネ嬢。その代わり……」
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