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「もちろん。このエルマンめにお任せ下さい」
悪戯っぽく笑ったエルマンが、フィーネに告げる。
「さて、フィーネ嬢。まず貴女は夜陰と雨に乗じ、工房へ戻りましょう。貴女が工房を飛び出したのは、この夕方のはず。追っ手は掛かっていないようですし、まだ領主も僕たちのことには気付いていないでしょう。もし仮に、すでに工房に見張りが付いていたとしても、今ならまだ一時的な動揺と判断され、怪しまれずに済みますから」
「あ、は、はい」
フィーネは彼の淀みない語りと深い読みに圧倒されつつも、こくこくとうなずいた。
さらにエルマンが続ける。
「貴女の側には、先生に付いていて頂きます。万一の場合の護衛と、フィーネ嬢の話し相手として」
「あ、で、でも……」
思わず口ごもったフィーネの側に、黒ずくめの怪少女が寄ってきた。
両手を腰に当てながら、彼女を見上げてくる。
「まあ、もし工房に見張りが付いていたら、こんな黒づくめ一発で怪しまれるわよね」
自虐的な言葉を吐いたアルヴィー。
しかしフィーネが『そんなことない』と言うより早く、ふふ、と不敵に笑った。
「けれど心配ご無用よ。まあ見ていなさいな、フィーネさん」
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