4

4/8
前へ
/58ページ
次へ
「腹へったな」   寮に戻ると慎は呟いた。夕飯は食べたが、かきこんだだけだったので空腹を覚える。だが食堂は既に閉まっているし、二人で緊張しながら肩を並べて歩いてきたので、コンビニに寄ることなど頭に浮かびもしなかった。 「じゃ、な」  慎が自室の前に来て、ぎこちなく手をあげると、雪弥は頷いた。が、慎がドアに手をかけたところで、遠慮がちな声がかかった。 「簡単なものなら、作れるけど」 「え?」  意味が判らず振り向いて問い返す。 「お腹、空いてるって」  先ほど、半分間を持たせるために慎が言った言葉をすくい取って、雪弥は言ったのだ。  慎がじっと見つめると、雪弥は自分のシャツの腹の辺りをぎゅっと掴んでいる。それだけを言うのに随分勇気を振り絞ったのが判った。熱いものが慎の胸にこみ上げる。 「作ってくれるのか」  返した声も心なしか掠れていた。雪弥がぎこちなく頷く。  廊下に誰もいなくてよかった。まるで放課後の告白のような甘苦しさに、慎は思わず苦笑した。  
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

286人が本棚に入れています
本棚に追加